収納しないブログ

持ち物を減らして収納術不要の暮らしを目指しています

世の中は厄介で困難で多様でちょっと美しく、おいしいものと楽しいことがたくさんあるよ。

明日(16日)は父の日とのことなので、パパンの話でもしようかな。

収納しない系お片付けブロガーの優多(ゆた)です

 

私が生まれ育ったのは田園地帯が広がる、人口1万人ほどの風光明媚な小さな村。パパンはその村役場で働く公務員でした。

「60点で十分」が口癖で、毎日定時で帰宅し、午後5時半には玉ねぎスライスをつまみに晩酌を始める呑気者。仕事は神の与えたまえし罰、と割り切っている風情がありありといった感じでしたが、プライベートでは小学生向けの相撲教室を運営したり登山をしたり温泉巡りをしたり海で泳いだりとなかなかに遊び好きな一面がありました。

 

低空飛行なパパンによる「60点で十分」の思想は、私の奥にもしっかりと植え付けられています▽

 

yuringo738.hatenablog.com

ちなみに全部過去形で書いていますが、父は存命で現在74歳。田舎で元気にコシヒカリを育てています。

さて、「60点で十分」の思想の持ち主であるパパンは娘の私に勉学を強いることもありませんでした。というか子供の成績には無頓着でした。「勉強したいなら勝手にどーぞ」という感じだったので、先祖代々の大量の不要なモノに溢れた家から出たかった私は中学卒業と同時に実家を出て遠方の高校に進学し、寮生活を始めました。

 

学校の成績には無頓着だったパパンですが、本はたくさん買ってくれました。

これは、私が親に対して最も感謝している点の一つです。

私が小学生の頃は、月3回ほどのペースで、村役場から帰宅した後にきょうだい3人を車に乗せて、村に一つだけあった小さな書店に連れて行ってくれました。

 

父は毎回、1人2冊ずつ本を買ってくれました。漫画でも小説でも雑誌でも、何でも可。

大抵はコミックスを2冊選んでいましたが、そのうちに「2冊目」は活字の文庫を手に取るようになりました。

大人になった今、振り返ってみると、この時に父が買ってくれた「2冊目の本」が、自分の根っこを作ってくれたと感じます。

 

懐かしのコバルト文庫から始まり、徐々に興味関心は角川ホラー文庫の棚へ。

小学校の図書室では絶対に出会えない、桐生操さんの「美しき拷問の本」「美しき殺人法100」といった書籍に衝撃を受け、活字の世界にのめり込んでいきました。

今も愛読する群ようこさんの作品と出会ったのも、この書店でした。昭和30年代の「恐るべき子どもたち」の世界を描いた小説「あたしが帰る家」を、夏休みの読書感想文の題材にした覚えがあります。この本で「甲斐性」という言葉を初めて知りました。

 

一人で生きる力を持たない子どもにとって、今いる世界の外側に、もっと広くて豊かな世界があると知ることは希望です。

小さな村の外に、努力と才能と運の範囲で、選ぼうと思えば選べる無数の選択肢が存在すること。世の中はどうやら自分のためにはできてはおらず、厄介で、困難で、でも想像以上に多様で見方によっては美しく、おいしいものと楽しいことがたくさんあるらしいということ。そしてとにかく本を読んでいれば孤独ではないこと。みじめには見えないこと。

 

パパンが意図していたとは思えませんが、あの頃に湯水のように本を買い与えてもらえて、小学生のうちに薄らぼんやりと世の中の輪郭を描けたことは幸せなことでした。

それなので私は、私の娘にも言葉と出会う機会を精一杯与えてあげたいと思っています▽

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モノまみれの家は片付けたほうが良いと切に思うけれど、ひとまず小学生の私に、自由に本を選ばせてくれたパパンには感謝しています。父の日おめでとう。

 

明日も愉快な人生を〜