「親孝行しなきゃ」ってちょっとほぼ呪いになっている気がします。
収納しない系お片付けブロガーの優多(ゆた)です。
土曜日の朝、自宅から車で1時間ほどの場所に住んでいる実父から連絡がありました。
「孫にステーキを食べさせたいから、夕方5時に来られるか」との呼び出しでした。
父は実に気まぐれな性質で、年に1回くらい、このように私たち母娘を突然食事に誘います。
車で1時間、しかも夜間に運転するのは毎回非常に億劫ではあるのですが、父も70歳半ば。両親と外食する機会も残り少ないと思われるので、心根が優しい私は「これも親孝行…」と義理心を発動して駆けつけてしまいます。
そしてこれまでの経験上、ほとんどの場合でこの「惰性の親孝行」は私に大いなる徒労感を残す残念な結果に終わります。もちろん今回も、ご多分に漏れずなかなかの徒労感を味わう羽目になりました。
まず、娘二人を連れて待ち合わせ時間の午後5時に実家へ到着すると、父と母が玄関先で待ち構えていました。実家の近くにある、馴染みのステーキハウス(チェーン店)に行くのかと思いきや、実家からさらに1時間ほどの場所にある洋食屋に行くとのこと。
聞いてない!
しかも、父からは「5、6年前に一回入ったことがあり、ステーキが美味しかったからまた食べたい。店の名前は覚えていない。予約もしていない。場所はだいたい分かるから、国道沿いを走っていけば見つかるはず」という非常に心もとない発言。
いや、無理でしょ…
普通に近くのチェーン店のステーキ食べに行こうよ…
という、娘の真っ当な提案を素直に受け取るような父ではありません。
「自分の車で道案内するから、後ろについて走って来い」と言われ、渋々出発することになりました。ちなみに父の車にはカーナビは付いていません。スマホも持っていないのでナビアプリもありません。頼りは5年前の父の記憶のみ。
夕暮れの山道を抜け、国道に出たところで左折。正味1時間ほど走ったところで、父の車が側道のコンビニに入りました。続いて停車すると、父が窓から顔を出して「左折じゃなくて右折だった!反対側だった!」と叫んでいます。Uターンし、来た道を反対方向に戻ることに…。
この辺りで嫌な予感は最高潮に達しました。
国道を15分ほど走って戻ると、父が再び左折。古びた自動車整備工場の後ろに、果たして目当ての洋食屋はありました。
だけど、看板の電気が消えています。
店の入り口には「ディナーは予約のみの営業です」の張り紙が。
助手席の母が「こんなことだと思ったよ…」とため息まじりに俯き、マイペースな父が「仕方ないだろ!」と語気荒く言い返すまでが両親のデフォルトです。
「孫にステーキを食べさせる」を本日の至上命題として動いていた父の頭には、国道沿いに無数にあるラーメン屋や蕎麦屋に路線変更する選択肢はありません。「この先にステーキが食べられそうな店があったはず」と言い張る父の車に後続して、再び夜の国道を走ることになりました。
さらに15分ほど走ったところで、父の車が再び側道の店に入りました。
家族経営のドライブイン兼ファミリーレストラン兼スナックのような形容し難い外観の飲食店です。
駐車場から見える窓にはカーテンの代わりに洗濯物がずらりと干してあり、小6の娘は「生活感やばい笑」と何故か若干興奮気味。
父は車を降りると「ステーキがあるかどうか聞いてくる!」と店に飛び込んで行きました。しばらくして戻ってきて「ステーキはないがポークソテーがある!ここにする!」と言い置いて、またズンズンと店の中に入って行きました。
仕方なく我々も車から降りて、父を追いかけて店内へ。
内装とメニューは普通のファミレスのようでした。私たちの他にお客さんはカップルが1組だけ。
店の奥は座敷になっていて、襖の壁に目を向けると「古着あります」の張り紙がありました。どうやら、カーテン代わりの洗濯物だと思っていた衣類は売り物の古着のようでした。
なんでレストランで古着販売?
あまり深く考えるのはやめましょう。
私と長女はオムライス、次女は醤油ラーメン、母はエビフライ定食、父は唐揚げ定食を注文しました。結局、誰も(ステーキの代替品である)ポークソテーは食べませんでした。
卵は薄焼きで美味しいオムライスでした。
食後に長女と次女がコーラフロートを追加注文したのですが、コーラは品切れとのことでメロンソーダになりました。
私は運転で疲れてしまいほぼ無言でオムライスを口に運んでいましたが、父と母は孫たちと部活の話や勉強の話をして楽しそうでした。
店先で父母と別れ、自宅に向かう帰り道、右側からドーンと破裂音が聞こえました。窓の外を見ると、遠くに打ち上げ花火が見えました。季節外れの花火大会のようでした。
父の気まぐれに振り回された徒労感は多大ではありますが、これも親孝行の一環と割り切るしかなさそうです。惰性の親孝行、あと何回できるかな。
明日も愉快な人生を〜